夏【スタッフブログ 設計:髙橋】
夏、ですね。
昔から夏場の夜の何とも言えない香りが好きなのですが、何だかワクワクもするけど同時に切ない感じもする不思議な香りは幾度かの夏の記憶に理由があるような気がします。
今から2年程前の夏の話になりますが、祖父母が住んでいた家が取り壊され冬には新しい3区画の戸建て分譲が建ちました。
幼い頃に過ごした場所や行った場所はとても鮮明に覚えていたりしますよね。
私にとって祖父母の家は強烈なノスタルジーを感じる場所であったことを建物が解体されてから、初めて自覚しました。
まるでその建物に幼い時の記憶が埋め込まれていて私の体のどこかと繋がっているような、「解体と同時に記憶も封印されてしまう」そんな気持ちにさえなりました。
どこからともなく漂う夕飯の匂い、仏壇に供えた線香の香りや良い子のチャイム、豆腐屋さんの笛の音やマッサージチェアに染み付いた加齢臭も寝そべった時に現れる訳の分からない天井の柄も、記憶は場所に埋め込まれていました。
その場所に行かなければ一生思い出すこともなかった記憶達なのかもしれません。
そこに何があった訳ではないけれど、時々上手に僕を諭してくれる そういう場所だったのだと思います。
新築として建てる家の最初の部分に携わる仕事ですが、私はその家の晩年を知りません。
住まう家族の喜びや悲しみ、成長などあらゆる時間を家はただ、とまったまま沢山の思い出をしまっているのかもしれません。
新築として引き渡していく家の多くも、いつか誰かのノスタルジーに変わっていく。
家のもう一つの側面を垣間見たような気がしました。
跡地に建った新しい3区画の戸建てにもまた新しい家族が住まい続いていくのでしょうね。
夏の解体現場を目にすると思い出すという、小話でした。
色々な夏がありますね。
皆様まだまだ暑い日が続いておりますのでお身体ご自愛ください。
※写真は僕の撮った写真ですが、お話のイメージです。